少年事件を知る

少年事件の基本概念や法的な手続き、少年友の会に関係する用語を解説します。

※ 少年事件Q&Aはこちら

少年事件とは
少年法とは
少年とは
非行とは
少年事件の流れ
(少年)審判とは
教育的措置とは
付添人とは
保護処分とは
保護観察とは
児童相談所とは
児童自立支援施設・児童養護施設とは
家庭裁判所調査官とは
試験観察とは
補導委託とは 
少年の保護に関係する機関とは
少年法 令和3年改正とは
特定少年とは
検察官送致とは
観護措置とは
少年鑑別所とは
後見人・後見監督人とは
親の会・保護者の会とは
学生ボランティアとは

少年事件とは

少年(男女とも含む表現です)が非行をしたときに、とられる手続全体を指します。少年法が主としてその手続を定めています。
簡単に概要を説明しますと、ある少年が例えば窃盗を働いた場合、警察が捜査をしてその少年を犯人として捕まえ、取り調べをしたのち、通常、事件は検察官を経由して家庭裁判所に送られます。家庭裁判所では、事件について裁判官、家庭裁判所調査官、書記官などの専門家が調査して、少年が二度と犯罪等を起こすことのないようにするにはどうしたらよいかを考え、教育的な指導を行ったり、裁判官が審判を開いて少年や親の言い分を聴いたうえ、必要に応じて少年院に送るなどの処分(保護処分)を決定したりするのです。

少年法とは

少年が非行をしたときにとられる手続全体を定めた法律です。
20歳未満の少年は、個人差はあるものの、まだ成長発達過程にあり、一般的には物事の是非を判断する能力が大人と比較して十分ではないと考えられます。そのような少年には、刑罰を科すよりも教育や指導を行うことで改善させた方がよいとの、人類の発展過程の経験知、叡智に基づき、特別な法律として制定されるようになりました。1899年アメリカ合衆国イリノイ州シカゴに、最初の少年裁判所が設置されましたが、そのときの州法が最初だと言われています。
日本では、大正11(1922)年に最初の(旧)少年法が成立し、戦後の昭和23(1948)年に現行の新少年法に全面改正されました。その後も、時代に応じて逐次改正され、近年では令和3(2021)年に大きな改正が行われています。

少年とは

20歳に満たない者をいいます(少年法2条1項)。平成30(2018)年に改正された民法では、18歳、19歳の者も成年となりました(民法4条)が、少年法では、この年齢の者も依然として少年として扱われます(ただし、「特定少年」として手続きの特例が定められています)。

非行とは

一般的には、犯罪を含む不良行為全般を指して使われていますが、少年法では、非行少年というとき、次の3つの少年を指します(少年法3条1項)。
① 14歳以上で、刑法等の刑罰を規定した法令(刑罰法令)に違反した少年(犯罪少年)
② 14歳未満で刑罰法令に触れる行為をした少年(触法少年)
③ 性格又は環境に照らし、将来①又は②の行為をする虞(おそれ)のある少年(虞犯(ぐはん)少年)
②は、刑法で14歳未満の行為は罰しない(刑法41条)とされている(法律上、刑事責任を負うほど成長していないとみなされている)ので、14歳未満の少年は、同じ行為をしても「犯罪」、「法令違反」とはいわず、「法令に触れる」といいます。
③の「おそれ」は、保護者の正当な監督に従わないとか、家に寄り付かないとか、犯罪性のある人と交際するとか、自分または他人の徳性を害する行為をするなどの事実があったうえで、性格や環境等に照らして判断されます。

少年事件の流れ

概略、次の図のとおりです。図中の用語の説明は、それぞれの用語説明をご覧ください。

(少年)審判とは

広くは、少年の健全な育成を期し、非行少年に対して、調査のうえ、性格の矯正や環境の調整に関する処分(保護処分)や措置を行う家庭裁判所の手続き全般をいいます(少年法1条参照)。
狭くは、裁判官が審判廷で行う、少年が確かに非行をしたかどうか、したと認められる場合に、どのような措置をとり、どのような処分(保護処分)をしたら少年が二度と非行をしないようになるのかなどを審理し、決定する手続きをいいます。

教育的措置とは

非行があった少年が再び非行に走ることのないようにするには、非行の内容や個々の少年の抱える問題に応じた適切な措置をとることが必要です。
家庭裁判所では、審判を開いて非行があった少年に対し保護処分や(刑事処分とするための)検察官送致の決定をしていますが、そのような処分までは行わない少年に対しても、非行について反省させ、これを繰り返すことのないように、調査から審判、処分の決定までの過程で、様々な方法で教育的な働きかけを行っています。この働きかけを教育的措置といいます。

教育的な働きかけとしては、例えば、下記の取組などが行われています。

1 裁判官による少年に対する訓戒や保護者に対する指導

2 家庭裁判所調査官による調査や試験観察の中で、個々の少年や保護者の問題に焦点を当てた面接指導

3 犯罪の被害を受けた方の実情や気持ちなどを聞かせ、非行について反省 を深めさせるための講習

4 薬物乱用の危険や交通違反の責任についての講習

5 民間ボランティアに少年を一定期間預け、生活態度や職業への心構えな どの指導を受ける補導委託

6 地域の清掃や老人福祉施設での介護などに参加させ、社会に対する償い の気持ちを持たせるとともに、社会の一員としての自覚を促す社会奉仕活動

7 親子関係の問題が非行の大きな原因となっている場合に、親子での共同作業を通じて親子関係の調整を図る親子合宿

8 SNSをいかにうまく使うかなど、情報リテラシーについて知り、自身の行為の問題性を気づかせる指導

付添人とは

少年事件の手続きの中で、少年の権利を保護する必要があったり、親が少年の面倒を見られない状況のため少年を手助けする必要がある場合などに、少年本人や親が家庭裁判所の許可を受けて選任する人を指します。(少年法10条)刑事事件の手続きでいう弁護人と共通する役割もありますが、少年事件の手続きの中での付添人は、より少年の親身になって少年のために活動することが期待されます。付添人は、少年、保護者、法定代理人、配偶者、親族などが家庭裁判所の許可を得て選任しますが、弁護士を付添人に選任する場合の許可は不要です。少年友の会会員が付添人に選任されることもあります。付添人は、少年審判に立ち会ったり、意見を述べたり、少年が少年鑑別所に入所しているときに面会を行ったり、処分に対して不服を申し立てることなどができます。

保護処分とは

家庭裁判所が審理の結果、少年の更生を図るためにする処分で、次の3種類があります(少年法24条1項)。
①  保護観察
②  児童自立支援施設・児童養護施設送致
③  少年院送致


①は、少年を在宅のままで、保護観察所の指導監督、補導援護を受けさせるものです。保護観察官や保護司が担当します。
②は、児童福祉法で設けられている施設を利用するもので、主として18歳未満の少年(児童福祉法上は「児童」と総称します)が対象になります。
③は、法務省の管轄下にある少年院に収容するものです。5種類の少年院があります(少年院法4条)。

保護観察(更生保護法48条)

保護観察官や保護司の指導・監督を受ければ社会内でも更生できると判断された場合に行われる保護処分です。決められた約束事を守りながら家庭などで生活し、保護観察官や保護司から生活や交友関係などについて指導を受けることになります。

児童自立支援施設・児童養護施設(児童福祉法35条、41条、44条)

「児童自立支援施設」と「児童養護施設」は、18歳未満の児童を対象とする児童福祉法で設置された施設です。。開放的な施設であり、家庭的な環境の中で少年を指導するといった点で、基本的に閉鎖施設に収容して矯正教育を行うために設けられた少年院とは異なる面があります(ただし、少年院によっては開放的な教育を行っているところもあります。)。少年審判では、少年の年齢や特性などを考慮し、これらの施設に送致する保護処分を決定することがあります。

少年院(少年院法4条)

比較的非行性の進んだ少年を収容して、教育、指導を行う施設です。施設で一定程度処遇効果があった場合は、少し早めに仮退院させ、社会内で保護観察所の指導につなぐこともあります。

少年院には、次のような種類があります。

種別およその年齢など心身の著しい障害の有無犯罪的傾向の進んだ者
第1種おおむね12歳以上23歳未満な し
第2種おおむね16歳以上23歳未満な し該 当
第3種おおむね12歳以上26歳未満あ り
第4種少年院で刑の執行を受ける者
第5種特定少年で保護観察中に少年院収容の決定を受けた者

家庭裁判所調査官

家庭裁判所調査官は、心理学、教育学、社会学その他の人間関係の諸科学の専門的知識を持った家庭裁判所の職員で、家庭裁判所で取り扱っている家事事件、少年事件などについて、裁判官の命令を受けて調査や調整を行います(少年法8条2項)。少年事件では、非行をしたとされる少年とその保護者に会ってそれまでの事情を聴くなどして、少年が非行に至った動機、原因、生育歴、性格、生活環境などの調査を行います。そして、必要に応じて少年の資質や性格傾向を把握するために心理テストを実施したり、少年鑑別所、保護観察所、児童相談所などの関係機関と情報交換や連携を図ったりしながら、少年が立ち直るために必要な方策を検討し、その結果を裁判官に報告します。この報告に基づいて、裁判官は審判を行い、少年の更生にとって最も適切な措置や保護処分を決定します。

試験観察 

家庭裁判所は、非行をした少年に対してその立ち直りに必要な措置や保護処分を決定する前に、一定の期間、家庭裁判所調査官に少年の様子を観察させ、その結果に基づいて最終的な結論を出すことがあります。これを「試験観察」といいます(少年法25条)。試験観察中は、家庭裁判所調査官が継続的に少年を指導し、援助しながら少年の行動や生活状況を観察することになります。家庭裁判所は、試験観察中に遵守すべき事項を定めたり、条件を付けて保護者に引き渡したり、適当な施設、団体または個人に補導を委託する(補導委託)ことがあります。

補導委託

「補導委託」とは、試験観察の中で、家庭裁判所が事前に登録するなどしている民間のボランティアの方に、少年をしばらくの間預け、そこで生活を共にしながら,生活指導や就業指導を行い、その様子を踏まえて最終的な処分を決定するという制度です。少年を預かっていただく個人や施設のことを「補導委託先」、補導委託先の責任者の方を「受託者」と呼んでいます。各地の少年友の会は、「補導委託先」や「受託者」と連携し、その活動を支援しています。

   

少年の保護に関係する機関

「少年の保護に関係する機関」は多岐にわたります。警察、検察のような捜査機関、児童相談所、児童福祉施設(児童養護施設や児童自立支援施設)などの児童福祉機関、少年院、少年鑑別所、保護観察所、更生保護委員会などの矯正、保護機関、各種学校、教育委員会等の教育機関など様々です。家庭裁判所は、必要に応じて、これらの機関と連携を図っています。

少年法令和3年改正

民法で、成年年齢(成人に達する年齢)が18歳と改正されたことを受けて、少年法の適用年齢をどのように定めるかが議論されました。最終的に、少年法の適用年齢は従来どおり20歳未満という点は変わりませんでしたが、18歳、19歳の少年を「特定少年」として、検察官への送致や保護処分について、特例措置をとることができるように改正されました。

検察官送致(少年法20条、62条、19条2項)

「検察官送致」とは、事件を検察官に送ることを指します。少年事件の多くは、検察官から家庭裁判所に送られてきますが、これを検察官に送りかえすことから「逆送」ともいわれます。検察官送致がされる場合として2つの種類があります。調査の結果、①少年の犯した罪の性質や情状から少年に刑事処分を受けさせることが相当と判断された場合、②少年が20歳以上であることが判明した場合(年齢超過による検察官送致)です。①の場合の中には、一定の罪については原則として検察官送致にすべきとされるものや、特定少年の場合の特例などが定められています(上記条文参照)。刑事処分が相当とされた場合、多くは成人と同様に地方裁判所の刑事裁判を受けることになりますが、例外的に保護処分が相当であるとして地方裁判所から再度家庭裁判所に事件が移されることがあります(少年法55条)。

観護措置

家庭裁判所は、少年事件の調査審判を行うにあたり、必要な場合は、①少年を家庭裁判所調査官の観護に付したり、②少年鑑別所に送って、心身の鑑別を受けさせたりすることがあります。これを「観護措置」といいます(少年法17条1項)。②の場合の期間は、原則として2週間ですが、一定の要件が認められるときは更新することができます(同条3項、4項)。 この措置に対しては、少年、保護者等から異議の申立てができます(同法17条の2)。

少年鑑別所

法務省が所管する施設で、少年法17条の観護措置により家庭裁判所から送られた少年などを収容して、心身の鑑別や観護処遇を行います。心身の鑑別を行った場合、「鑑別結果通知書」が作成されて家庭裁判所に送られ、審判の資料となります。鑑別を行った技官と家庭裁判所調査官とが、少年の立ち直りに向けた処遇について、意見交換を行うこともあります。

少年友の会の会員が、付添人として少年鑑別所に行き、少年と面談を行って少年の悩みとか今後の進路の相談相手となることもあります。

後見人や後見監督人

「未成年後見人」とは、親権者の死亡などのため、未成年者に対し親権を行う者がいない場合などに未成年者の代理人となり、未成年者の監護養育、財産管理、契約等の法律行為などを行う者のことを指します。未成年後見人になるべき人がいない場合は、親族、利害関係人の請求により家庭裁判所が選任しますが、少年友の会の会員が選任されることもあります。また、家庭裁判所は、未成年後見人の後見業務を監督するため「未成年後見監督人」を選任することもあります。これにも少年友の会会員が選任されることがあります。

親の会・保護者の会

家庭裁判所は、法令違反をした少年に対しての教育的な働きかけだけではなく、その保護者に対しても、少年の非行を防止するため、指導その他の働きかけを行うことができます(少年法25条の2)。各地の家庭裁判所では、親や保護者(以下、単に「親」という)への働きかけのため、親やに対し、これまでの少年へのかかわり方を見直し、改めるべきところは改め、また、より良い接し方を学んでもらう機会として、「親の会」、「保護者の会」を開くような取組をしています。少年友の会は、会員がその会に加わって、そのプログラムを支援しています。

学生ボランティア

少年友の会は、通常の会員のほか、大学生・大学院生などの学生会員を組織している場合があります。学生会員は、「学生ボランティア」と呼ばれることが多く、家庭裁判所からの依頼を受け、主に家庭裁判所の教育的なかかわりの担い手の一翼として活動をしています。

少年たちと同世代か少し年上の学生ボランティアは、少年と共通の思春期などの悩みを乗り越えてきた者もいて、少年のよき相談相手となり、少年たちの更生に良い効果があることがこれまでの活動からわかってきています。

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